タコ唐草文様(蛸唐草文様)たこからくさもんよう とは
「タコ唐草文様」は、唐草模様の一種で、つる草が四方八方に伸び広がるように渦を巻いた連続模様のことを指します。
名前に「タコ」と付くのは、渦を巻いた形がタコの足を思わせるためです。


中村清六 たこ唐草湯呑
縁起が良いとされる理由
繁栄・長寿の象徴
唐草はつる草が途切れることなくどこまでも伸びていくことから、「子孫繁栄」「長寿」「家運隆盛」
を表すとされます。
タコ唐草も同じく、その連続性が縁起の良さにつながっています。
永続・つながりの意味
絡み合うつる草の形は、家族や人と人とのつながりを象徴します。
切れることなく続く模様は「縁が続く」「絆が長く続く」という吉祥の意味合いを持っています。
魔除けの力
唐草は古来より装飾だけでなく「厄を払い、福を呼び込む」文様とも考えられてきました。
渦を巻くタコ唐草には、邪を寄せ付けない力があると信じられていました。
生活の器や着物に多用された背景
江戸時代以降、染物や陶磁器の代表的な文様として広く用いられ、日常の中に「縁起担ぎ」として取り入れられてきました。
特に陶器の染付けに多く見られるのは、「家庭が絶えず栄えるように」との願いが込められていたからです。
器(陶磁器)に使われるタコ唐草
・染付け磁器の定番文様
有田焼や瀬戸焼など、日本の染付け磁器ではタコ唐草が最も代表的な文様の一つです。
青い唐草模様が器全体に広がる姿は「永遠の繁栄」を意味し、日常使いの器から祝い事の器まで幅広く親しまれてきました。
・縁起を込めた家庭の器
家庭用の飯碗や大皿にタコ唐草が多いのは、家族の食卓を囲む場に「家運隆盛・無病息災・縁のつながり」を願ったからです。
毎日の食事に縁起を取り込むことで、生活そのものを豊かにする意識があったと考えられます。
唐草文様の起源と伝来 西アジアにルーツを持つ文様
唐草文様は日本独自のものではなく、西アジア(古代エジプトやメソポタミア)で生まれた植物文様にルーツがあります。
生命力や豊穣を象徴する「つる草」「ぶどうの蔓」の装飾が起源とされ、古代ギリシア・ローマの建築や装飾にも多用されました。
シルクロードを経て東へ
シルクロードの交易を通じて、唐草模様はインド、中国へと伝わります。
特に中国では仏教美術や陶磁器の装飾として盛んに用いられ、「唐草」の名はここに由来します。
※「唐」は中国を意味するため、日本に伝わった時に「唐の国から来た草の模様」という意味で「唐草」と呼ばれるようになりました。
日本への伝来
日本には飛鳥時代〜奈良時代にかけて仏教美術や染織を通じて伝わりました。
法隆寺の壁画や装飾品、正倉院宝物の中にも唐草文様を見ることができます。
以後、日本で独自にアレンジされ、和様化された「タコ唐草」などのバリエーションが発展しました。
日本での発展と定着
・仏教美術から生活へ
最初は寺院や仏具の荘厳に使われました。
平安以降、衣服や調度品、陶磁器など、貴族・武士・庶民の生活へと広がっていきました。
・江戸時代の大衆文化
特に陶磁器の輸出品としてタコ唐草が大量に描かれ、世界中で「ジャパニーズパターン」として人気を博しました。
国内でも風呂敷や染物、着物に広がり、庶民の縁起柄として定着しました。
まとめ
唐草文様は 西アジア → シルクロード → 中国 → 日本 という道をたどって伝わった国際的な文様。
日本では仏教美術から生活文化へ広がり、やがて「タコ唐草」というユニークなアレンジを生み出しました。
その結果、「繁栄」「長寿」「縁の継続」「魔除け」という意味を持つ、日常からハレの場まで愛される万能の縁起柄として定着したのです。

唐草文様の鉢と小鉢

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